鉤を窃む者は誅せられ、国を窃む者は諸侯となる(こうをぬすむものはちゅうせられ、くにをぬすむものはしょこうとなる)
帯を留める金具ほどの小さな物を盗んだ者は死罪にされるのに、国をまるごと奪い取った者は諸侯として敬われる。小さな悪事は厳しく裁かれ、大きな悪事はかえってとがめられずに富や地位まで手に入る、という世の中の筋の通らなさを皮肉っている。
「鉤」は、帯の端に付けて留める金具。「誅せられ」は、罪を責められて殺されること。「諸侯」は、古代の中国で天子から土地を分け与えられ、その地を治めた君主。
『荘子』胠篋篇の「彼竊鉤者誅、竊國者爲諸侯」による。荘子は、国を盗んだ者は聖人の説く仁義までいっしょに盗み取り、諸侯となって正しい人の顔をしていると述べ、仁義の教えがかえって大泥棒を守る役に立っていると批判した。のちに司馬遷も『史記』游侠列伝の序でこの句を引いている。